エクストリーム系ウォータースポーツ「ウェイクサーフィン」が注目され、人気だ。ウェイクボードにも似た、ボートの引き波=ウェイキを利用して波に乗る、この楽しげでアクティブなスポーツに、日本マリン事業協会マリンアンバサダーの五郎丸歩さん(ゴロー)が挑戦!さらにゴローのチームメイト、滋賀県出身で「しがスポーツ大使」の山本幸輝さん(コウキ)、そして立命館大学くさつキャンパスで青春時代を過ごした大戸裕矢さん(オーちゃん)という、滋賀県と琵琶湖にゆかりのある二人のラガーメンが飛び入り参加。ウェイクサーフィンの魅力と3人の大男が楽しむ、琵琶湖(滋賀県)での愉快な休日の様子をお届けしよう。
いつでも、いつまでも波乗りができる
ウェイクサーフィンはボートで波を起こし、その波にボードで乗って楽しむスポーツ。通常のサーフィンと異なり、波をひたすら待ったり、波に乗るタイミングを逃したりと、そういったことが無い。つまりボートが走り続ける限り、いつでも波に乗れる。そしてボートが走り続ける限り、いつまでも波に乗っていられるのだ。ウェイキをみごとに自分のものにしているのは「Cover」のインストラクター、土田純菜さん。
必要なのはボード一枚
ウェイクサーフィンに必要なのはウェイクサーフボード(写真奥)。手前のウェイクボードと大きく異なるのは脚を乗せる位置にバインディングがあるかないか。また通常のサーフボードとも異なるのだとか。価格は幅があるが通常10万円前後。でもご安心を。ほとんどのトーイングサービスのショップでレンタルできる。そのほか、時季によってウェットスーツが必要となりそうだが、こちらもレンタルでOKだ。
トーイングサービスのあるショップを利用
今回、お世話になったのは滋賀県大津市のヤマハマリーナ琵琶湖さん、そしてマリーナ内でトーイングサービスを行っている「Cover」さん。先述したように必要なものはすべてレンタルで対応。もちろん専用のスキーボートでドライビングしてくれる。ボートは理想の波を作り出してくれるインボードタイプが主流。またジェットボートでも楽しめる。思わぬ事故を防ぐため、プロペラが船体の外側に露出しているスタンドライブ、船外機タイプのボートはNGだ。
到着後、軽くオリエンテーションを受け、早速クラブハウス前の芝生の上で講習を受ける。芝生の上でボードに乗るとボードが割れてしまうことがあるので、スケートボードで代用。ここでは主にスタート時の姿勢と起き上がり方、そこからボードに立ち上がり、ロープを手放し、波に乗るまでのポイント、コツが伝授される。
心はすでに波の上
スケートボードの上に立ち、心はすでに波の上である。ちゃんと人の話を聞いているだろうか。波に乗ることなんてできるのだろうか。
迷い無し。いよいよ出陣!
一通りのレクチャーを受け、いよいよ湖上へ。3人ともウェイクボードもサーフィンも未体験だがイメージはつかんだ。この日の目標はとにかく「波の上に立つこと」。インストラクターも「波に立たせること」を第一の目標に設定。通常15分を2本。きょうは時間もたっぷりある。インストラクターは「彼らなら大丈夫です」と太鼓判を押してくれた。
結論を先に言ってしまおう。見よ、この勇姿を。トップバッターとしてトライしたゴローはみごと波に乗ることに成功。トップアスリートにしてマリンアンバサダーの面目躍如だ。「さすが」「すばらしい」「すげえ」と仲間の間で賞賛が飛び交う。
引き波にもまれ、こけて。
それを繰り返して
ゴローの場合、トーイングされながら、最初からなんなくボードの上に立つことに成功した。あとは手にしたトーイングロープを放つだけ。最初はそのタイミングがなかなかつかめない。
力を抜く、立ち上がるタイミング、
ボードの立ち位置
「僕と大戸とで、事前にネットの動画を見てきたんだけど、これは楽しそうだと思いました。でも内心では“みんなすごいな。これは無理かもしれない……”と。それでも純菜さんのアドバイスを聞いていうるうちに少しずつできる気がしてきました」とゴロー。波の上を滑るための主なポイントは三つ。仰向けの姿勢から力を抜いて“起き上がりこぼし”のごとくクルッと起き上がり、焦らずゆっくりと立ち上がり、立ち上がったらボードでの立ち位置を調整すること。
「もっとも雰囲気があると」と代表に
言わしめた大戸裕矢
ボードの隅に両足のかかとを乗せ、スタート姿勢を作って水面を漂うオーちゃんはとてもリラックスしているように見える。ドライバーを務めてくれたCoverの代表・工藤誠史さんはその姿を見て「いちばんできそうな雰囲気があるなあ」とぽつり。ポイントの一つ「余計な力を抜く」点において、オーちゃんはほぼ満点合格なのである。
そしてオーちゃんも何度か失敗を繰り返して目標達成。「力を抜いて立ち上がるタイミングをつかんだら、あとはできるようになりました。それと純菜さんのアドバイスを聞いてそれを実践していくうちに自分の中でレベルが少しずつ上がっていくのを実感できました」。オーちゃんを見ていたゴローは「あいつ、ぜったいウェイクサーフィンにハマりますよ、帰ってから浜名湖でもやるんじゃないですかね」とからかい半分。失敗しても笑顔を絶やすことのないオーちゃんは、それほど楽しそうだった。
船上とプレイヤーの楽しい一体感!
最初はロープでつながっている。ロープを手放してもすぐ近くで波に乗る仲間に声援を飛ばせる。時に冷やかす。プレーヤーとボートは見えないロープでつながったままだ。波に乗っているときもそうでないときも笑顔が絶えない。これもトーイングスポーツの魅力だ。
休憩中。コウキ、琵琶湖に落ちる
湖からボートに上がるとき、ゴローがコウキに手助けを求める。コウキが手を差し出すとゴローはコウキの手をつかみ、湖に引きずり込む。みんなで笑う。コウキがつけていたライフジャケットは自動膨張式だ。泳ぎ出すと「プシュー」と音を立ててライジャケが膨らんだ。二度目の笑いが船内に起こった。真似はしない方がよろしい。
いよいよラストバッター、
グーフィーで挑む山本幸輝
サウスポーのコウキはグーフィー(右足を前に置くスタイル)で挑戦。「ゴローさんと大戸、二人へのアドバイスをすべて冷静に聞いていたので、ぼくがいちばん理解できているはず」と言いながらも、少し不安そうな表情を浮かべる。緊張しているのか。それでも果敢に湖へと飛び込んだ。「しがスポーツ大使」としてのプレッシャーもあったせいか、ボートに曳航されるも体に力が入りすぎて、なかなか立つことができない。純菜さんは「実は陸上でのスケボーのときから山本さんが立てるかどうか、いちばん心配だったんですよ」と告白。おいおい。
コウキのウェイクサーフィンに声援を送る
Coverの代表の工藤さんも真剣な眼差しをコウキに注いでいる。起き上がるまでの視線の位置など、純菜さんを通して細かなアドバイスが伝わる。ラストバッターであること、またコウキのキャラクターもあって、船上のムードは最高潮に達していた。
インストラクターの演技を振り返ってみよう
最初に模範を見せてくれた純菜さんの演技を写真で見直してみよう。最初の姿勢から立ち上がり、ロープを手放して波に乗るまで、余計な力がどこにも入っていない。立ち上がってからはロープを手にした状態でボード上の立ち位置を変え、バランスを取る。足の親指の力で踵を引き寄せる要領で少しずつボートの中央に移動する。
これまで見てきたすべてを思い出し、新たなアドバイスも加わって、コウキの表情にも余裕が生まれ出す。実は、コウキもまたそれほどの苦労をせず、なんなく立ち上がることができたし、コツをつかんだあとはあっという間に自分のものにしている。「言われたことを思い出し、頭の中で反復しながら実践しました。優しいインストラクターのおかげです」と楽しそう。一方、純菜さんは「乗れるようになるきっかけは人それぞれですが、板の下で水が動く感覚をつかみ取ったときと言うか、つまり理屈よりも感覚的なものかも。小さい子どもがふとしたきっかけで簡単に一輪車に乗れるようになるじゃないですか。あれと同じだと思います」」とコウキの目標達成を誰よりも喜んでいた。
みなさん素晴らしい。吸収力が高いです
陸に上がって、記念撮影。「みなさんさすがだなと感心しました」と、代表の工藤さんは一日を振り返る。「最初のうちは水を飲んでしまったり、鼻に入ったり、いやになって諦めてしまう人もいるんですけど、きょうのみなさんは決して諦めない。アドバイスを素直にしっかり聞く。吸収力が高い。自分がボートにいるときも人の演技を真剣に見て研究していたようですね。やはりトップアスリートなんだなあと感心しました」。
最高に楽しいスポーツだ!
たっぷり遊んだあとは、マリーナのプールサイドでリラックスムードの反省会。といっても反省材料など何もない。「ほんとに楽しかった!」「またやりたい!」「(地元の)浜名湖でもできるのかな?」と、口から出るのは次回への期待の言葉ばかり。
CAST
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五郎丸歩(ごろうまる あゆむ):GORO
海が好き、釣りが好き。 子どもたちと一緒に海とマリンレジャーの魅力を発信する一般社団法人日本マリン事業協会・マリンアンバサダー。ラグビートップリーグ、ヤマハ発動機ジュビロ所属のラグビー選手。得点王、ベストキッカーなどの数々の記録を残す。ラグビー日本代表選手として2015年ワールドカップ英国大会に出場し、正確なゴールキックで世界に「ゴロウマル」の名を広めた。
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山本幸輝(やまもと こうき):コウキ
ヤマハ発動機ジュビロ所属のラグビー選手。スクラムの強さは大学生時代から定評があり、2015年にヤマハ発動機の日本選手権初優勝に貢献。日本代表選手としても活躍し、7試合に出場。2023年W杯フランス大会出場を狙う。出身地の滋賀県では「しがスポーツ大使」に就任。子供たちにスポーツの魅力を伝えている。
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大戸裕矢(おおど ゆうや):オーちゃん
ヤマハ発動機ジュビロ所属のラグビー選手。ラグビーが盛んで有名な埼玉県熊谷市出身。2015年、五郎丸選手や山本選手らと共にヤマハ発動機の日本選手権優勝に貢献。2019年度から主将に就任。柔和な表情からは想像もつかないハードなタックルと突進でチームの先頭に立つ。
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工藤誠史(くどう せいじ)
熊本県出身のプロ・ウェイクサーファー、プロウエイクボーダーのダブルプロ。JWBA日本ウェイクサーフィン協会公認。ヤマハマリーナ琵琶湖をベースにウェイクサーフィンをはじめウェイクボードなどトーイングスポーツのサービスを提供する「Cover」代表。
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土田純菜(つちだ じゅんな)
京都府出身のプロウェイクサーファー。2019年「JWBA Surfing Tourチャンピオン」。
2019年「JWBA関西、東海ブロック 1位」。「Cover」でインストラクターを務める。
【協力】ヤマハマリーナ琵琶湖
日本のマリンレジャー文化を育んできた、日本でもっとも広大な面積を持つ湖「琵琶湖」のマリーナ。ボートやヨットの保管はもとより、レンタルボートなど琵琶湖で楽しめる様々なマリンアクティビティを提供している
〒520-0105
滋賀県大津市下阪本5-2-2
TEL:077-578-2182
https://biwako.yamaha-marina.co.jp
※文中敬称略
※取材・撮影:2020年6月24日。感染予防対策などマリーナの規則に従って行っています。